アニメ感想

宇宙戦艦ヤマトについて語る

執筆者:佐佐木あつし

「宇宙戦艦ヤマト2202」シリーズ上映中

皆さんは映画を見るために徹夜で並んだことがあるだろうか?

僕はある。

1977年の夏、空前のブームを巻き起こした「宇宙戦艦ヤマト劇場版」を見るため、前日から徹夜して第一回上映を見た。
中学二年生だった。

そして今、2017年。40年の時間の果て、
ヤマトは「宇宙戦艦ヤマト2202」として現在、章立てで制作・上映されている。

宇宙戦艦ヤマト2202
出典:http://yamato2202.net/

前作「宇宙戦艦ヤマト2199」において21世紀に完全復活したヤマト。

この中には1974年の本放送の時に、予算の都合や視聴率の関係で削除あるいは未使用になった航海途中でのヤマト艦内での大規模な反乱や、艦内に侵入した女性兵士の破壊工作などを意識した話が盛り込まれている。

宇宙戦艦ヤマトの魅力とは

当時、社会現象ともなったあの「ヤマト」の魅力とは一体何だったのか。

僕の記憶ではヤマト前とヤマト以降ではTVアニメにおいて宇宙そのものの描かれかたが違っていたように思う。
ヤマト以前の宇宙は「ゼロテスター」や「グレンダイザー」などで描かれたように、ヤマトに比べ明るいブルーが基本になっていた。ヤマトの宇宙は暗い。そうすることでいきなりリアル感と宇宙の深淵が見事に表現され、ヤマトの孤独感が強調されたのだ。

武器にしても、ヤマト以前は基本がビームで、機体の先端あたりから照射される「なんちゃらビーム」がほとんどだった、
いわゆる大砲なんていう時代錯誤なものが宇宙で使える訳がない、という否定的なロジックからそうなったのであろうが、いやいや。ヤマトの武器は基本が「砲」なのである。一部、パルスレーザーのようなレーザー兵器はあるものの、三つの主砲と二つの副砲、艦首魚雷に煙突ミサイル、そして波動砲と、どこまでもアナログなのだ。最も厳密に言えば主砲はショックカノンという衝撃波だが実弾も装填されるし、波動砲は光線銃ではなくタキオン粒子を取り込み、小宇宙を作り出して空間ごと吹き飛ばす兵器であると、松本零士先生が述べられている。
と、まあ。色々と細かな設定はあるのだがここではそんな話はどうでもいい。
宇宙にアナログ感バリバリの戦艦が大砲で戦うといったその姿に僕たちはイチコロにやられたのだ。そこが重要なのである。

そして僕達がシビレた演出として、各兵器の細密な操作手順がある。
「なんちゃらビーーム!」と主人公が叫んでボタンをポチッと押せば発射される謎の光線とはわけが違うのだ。

中でも波動砲の発射シークエンスは秀逸で、
初期に於いては、まず艦内の全ての電源を落とし再始動に向けて貯蓄する。

「波動砲発射用意!!」
沖田艦長の命令一下、古代や森雪、徳川機関長らが一つ一つの手順を確実に行っていく。
「圧力弁閉鎖!強制注入器作動、エネルギー充填開始」
「セイフティーロック解除!」
「ターゲットスコープ、オープン!
電影クロスゲージ明度20!!」
森雪が間髪を入れず報告をする。
「タキオン粒子出力上昇中」
そして徳川機関長。
「エネルギー充填120%」
艦内に進捗を知らせる音声信号が高まっていく。
「目標ヤマトの軸線に乗りました」
「誤差修正右1度、上下角3度」
そこへ満を持して沖田艦長が叫ぶ。
「総員対ショック、 対閃光防御!!」
対閃光ゴーグルをつけた古代の前のヘッドアップディスプレイで目標物が揺らぐ。
「最終セイフティーロック、解除」
「波動砲発射10秒前!」
「9、8、7、6、5、4、3、2、1、ゼロ」
「波動砲、発射!!!!」

どーーーですか!!!どーーーですか!!

この段取りの長さ!溜め!緊張感!そしてその後の
発射ボタンを押してから若干の時間差で、波動砲発射口に集まるタキオン粒子の煌めきのあと、ようやく大閃光と共に発射される波動砲の神々しさ!

「なんちゃらビーム」とはわけが違うのですよ!!
敵が数十メートルレベルのペソいロボットとはわけが違うのですよ!
オーストラリア大陸レベルの浮遊大陸だったり、太陽のごとく灼熱の星オリオンのアルファ星(多分ペテルギウス?)の巨大プロミネンスだったり、果には「ヤマトよ永遠に」で二重銀河まで吹き飛ばしたりするんですよ(笑)

三輪車とF1ですよ、お猿さんとホーキング博士、メダカとクジラ、おにぎりと満漢全席。
あー!もう!比べ方がわからないくらい、ともかく全然レベルが違うんです。

それは裏番組で「アルプスの少女ハイジ」なんて見ている場合じゃない。
日本中のヲタクが吹っ飛ぶ一大事件だったわけです。

ヲタク達がヤマトに熱狂したわけ

当時、ヲタクという言葉が出始めた1970年台後期、その時のヲタクは今のようなイメージではなく、若者の世相の一つとして特段、上にも下にも見られず、誰しもが「あなた」のことを何気なく「お宅(ヲタク)」と呼び始めた単なる流行り言葉の一つだった。

そうした先進性?を持った若者たちは「ヤマト」に飛びつき、アニメブームが巻き起こった。それらの若者の情報源はサブカルチャーの雄として「月刊OUT」(みのり書房)があり「アニメージュ」(徳間書店)、そして「ニュータイプ」(角川書店)へと受け継がれていく。

日本各地では「宇宙戦艦ヤマト」の展示会やイベントが組まれ、ファンはこぞって出かけて行き、現在と同じく、キャラクターグッズを買い漁った。アニメの絵がついた紙袋が登場したのも、このヤマトからではあるまいか。


↑知人から寄贈していただいた当時のお宝グッズの一部

その頃はまだ、ビデオもない時代で、記録を保存するにはラジカセ(ラジオとカセットのテープレコーダーを一体化した機械)しか無く、外部マイクでテレビの音をスピーカー部分から直接拾う。それしか方法がなかった。
突然の電話や、家族のくしゃみなどは最も許されないことで、ヤマトが放送されている30分はまるで生放送のように皆ピリピリしていたし、中には部屋を暗くして三脚でテレビ画面を写真に収めていく強者までいた。

果たして何故、ヤマトはそれほどまでに愛されたのか。
答えは至極簡単である。

「誰も見たことがない全く新しいもの」

だったからである。

勿論ストーリーは西遊記をベースにした古典的なものである。
だが、それに気づいたファンはどれくらいいただろう。
ストーリーの基本的な作り方はそんなに多くはない。
ここで言う全く新しいものというのはそれまでのSF アニメと一線を画すアプローチ方法のことだ

何よりも宇宙戦艦という文字通りのビジュアルデザイン(これに関しては松本零士先生の功績は計り知れない)
緻密な世界観と設定、メカの描写、人間関係の密度、当時最新の宇宙理論...
先に書いたような戦闘シーンのシークエンスに「波動砲」「ワープ航法」など多用されるSF用語。
どこをとっても、ヤマト以前とはまったく違うアプローチに満ち満ちた作品それが「宇宙戦艦ヤマト」なのだ。

ヤマトに対しての願い

現在、作られている「宇宙戦艦ヤマト2202」はその正当な流れを組み、世代を超えてファンを魅了している。昭和のストーリーを知っている我々が見ても次の展開がどうなるのか、あのエピソードをどうやって入れていくのか。あのキャラクターの運命はどうなるのか。先が読めないストーリーテリングは秀逸であるとしか言い様がない。

個人的に少しだけ不満を言うと、やはりヒロインの森雪は今風のツンデレ系ではなく、昔の大和撫子的昭和の乙女な感じがもっと欲しかった。もっというと
我々昭和のヤマトファンが思う森雪のイメージは麻上洋子さんで固まってしまっているのかもしれない。
「古代君が!古代君が死んじゃう」
あの名セリフに当時はなかった言葉「萌え」を感じたファンがどれほどいたことだろうか?

そういえば・・・

ここまで書いて初めて思い出したが、
過去に「宇宙戦艦ヤマト復活編」とか言うのもあった気がする(笑)
ググってみると2009年に作られ、あの石原慎太郎大先生を原作に迎えての鳴り物入り作品だったが、僕的には数ある『ヤマト』の黒歴史の中でも最大級のもの。

思い出しはしたが、これ以上は一切触れるつもりもない(爆)

ただ黒歴史で思い出したのが、ファンの中には「ヤマト」は沖田十三の死とともに終わった。あれですべては完結しているといったという意見である。

確かに昔の「宇宙戦艦ヤマト2(さらば宇宙戦艦ヤマト愛の戦士たち)」は蛇足感があったし、TV版と映画版の二種類のエンディングに賛否は別れた。黒歴史の始まりでもあった。

今作「宇宙戦艦ヤマト2202」に於いては黒歴史だけは踏襲せず、誰しもが待ち望んだ形でなんとか頑張って終わってもらいたいと切に願う。

男はいつだってあの子が振っていた真っ赤なスカーフを胸に大いなる海原へと旅立つのだ。
今後もヤマトの旅を見つめ続けていきたいと思う。

宇宙戦艦ヤマト
↑「左から宇宙戦艦ヤマトPARTⅡオールカラー総集編」(秋田書店)、「さらば宇宙戦艦ヤマト映画テレビマガジン」(秋田書店)、「少年キング増刊さらば宇宙戦艦ヤマトアニメセルコレクション」

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